PTAの法的根拠や法的性質とは?行政書士が具体的に解説します

PTAとは、Parent-Teacher Associationの頭文字をとったもので、各学校で組織された、保護者と教職員による「社会教育関係団体」です(社会教育法10条参照)。Parent-Teacher Associationとは、学校に通う子どもの保護者(Parent)と教職員(Teacher)からなる団体(Association)を意味しています。PTAは任意加入の団体であり、結成や加入を義務付ける法的根拠はなく、加入を強制することはできません。したがって、PTAは全ての児童生徒のためのボランティア活動です。

社会教育法
第十条 (社会教育関係団体の定義)
この法律で「社会教育関係団体」とは、法人であると否とを問わず、公の支配に属しない団体で社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするものをいう。

第十一条 (文部科学大臣及び教育委員会との関係)
文部科学大臣及び教育委員会は、社会教育関係団体の求めに応じ、これに対し、専門的技術的指導又は助言を与えることができる。
2  文部科学大臣及び教育委員会は、社会教育関係団体の求めに応じ、これに対し、社会教育に関する事業に必要な物資の確保につき援助を行う。

第十二条(国及び地方公共団体との関係)
国及び地方公共団体は、社会教育関係団体に対し、いかなる方法によつても、不当に統制的支配を及ぼし、又はその事業に干渉を加えてはならない。

PTAの法律上の位置付け

PTAを正面から規定した法律は存在しませんが、PTAの主催する活動における災害等についてこれら共済制度に関連してPTAを定義した法律が存在します(PTA・青少年教育団体共済法)。

PTA・青少年教育団体共済法によれば、「PTA」とは、学校に在籍する児童生徒等の保護者及び当該学校の教職員で構成される団体又はその連合体をいいます。本サイトでは、PTAと表記する場合には前者の「団体」を指すものとします。

PTA・青少年教育団体共済法
第二条 (定義)
この法律において「PTA」とは、学校(学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 に規定する学校(大学を除く。)及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律 (平成十八年法律第七十七号)第二条第七項 に規定する幼保連携型認定こども園をいう。以下同じ。)に在籍する幼児、児童、生徒若しくは学生(以下「児童生徒等」という。)の保護者(学校教育法第十六条 に規定する保護者をいい、同条 に規定する保護者のない場合における里親(児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)第二十七条第一項第三号 の規定により委託を受けた里親をいう。)その他の文部科学省令で定める者を含む。以下同じ。)及び当該学校の教職員で構成される団体又はその連合体をいう。

上記の法律はPTAの法人格を基礎付けるものではなく、他の法律によってPTAに法人格が付与されていることもありません。したがって、PTAは一般的な同窓会などと同様の法人格を持たない団体です。

PTAは法人なのか?

私法上の世界で権利や義務の主体になれる「資格」のことを、「権利能力」といいます。すなわち、この「権利能力」を持たない者は契約を締結するなどの権利や義務を持つことができません。

そして、この「権利能力」を持っているのは、私たち生身の人間である「自然人」の他に一定のルールに基づいて成立した団体である「法人」があります。すなわち、団体に関しては「法人格」を持っている「法人」だけが「権利能力」を有しているのです。

権利能力を持っている者

  • 自然人=生まれながらにして権利能力を持つ
  • 法人=一定のルールに基づき一定の範囲内で権利能力を持つ

PTAに対して一般的に法人格を与える根拠となる法律は存在せず、また一般社団法人などの法人格を取得しているケースも稀なので、PTAは法人格を持たない任意団体である場合がほとんどです。したがって、一般的にPTAは法人ではありません。
このような法人格を持たない任意団体を「権利能力なき社団」や「人格なき社団」と呼びます。

PTAの法的性質

上述の通り、PTAは法人格を持たない任意団体です(いわゆる「権利能力なき社団」もしくは「人格なき社団」)。

権利能力なき社団(人格なき社団)が成立するための要件として、最高裁判例昭和39年10月15日は「法人に非ざる社団が成立するためには、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する。」と判示しています。

さらに、権利能力なき社団の財産については、「法人に非ざる社団がその名においてその代表者により取得した資産は、構成員に総有的に帰属するものと解すべきである。」と判示しています。

また、最高裁判例昭和48年10月9日は「権利能力のない社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、社団の構成員全員に一個の義務として総有的に帰属し、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し個人的債務ないし責任を負わない。」とも判示しています。

権利能力なき社団の成立要件

  1. 団体としての組織をそなえ
  2. 多数決の原則が行なわれ
  3. 構成員の変更にかかわらず団体が存続し
  4. その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定している

権利能力なき社団の財産の帰属

権利能力なき社団の資産は、その構成員に総有的に帰属する

権利能力なき社団の対外的行為と構成員の責任

社団の構成員全員に一個の義務として総有的に帰属し、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し個人的債務ないし責任を負わない(有限責任)

PTAが任意団体として成立する条件

前記の最高裁判所判例をPTAに当てはめると、以下のようになります。

団体としての組織

構成員であるPTA会員の中から代表者としてPTA会長が選任され、構成員であるPTA会員とは独立した存在として認められる程度の組織が必要です。

多数決の原則

総会や役員会、常任委員会(運営会議)などの各種会議において、多数決原理による採決が実施されていることが必要です。

なお、多数決よりも高いハードル(例:全会一致など)は多数決の原則に包含されるため、全会一致で意思決定しているPTAもこの要件を満たしていると考えられます。

構成員の変更にかかわらず団体が存続

卒業生の保護者であるPTA会員が退会する一方で、新入生の保護者が新たにPTA会員として加入するなど構成員であるPTA会員の変更があるにもかかわらず、PTAという団体が存続していることが必要です。

その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定

PTA会則や細則が制定され総会や役員会などの合議体で決定すべき事項が決まっているのが一般的です。さらに、総会で会長や副会長等の役員が選出され、各役職に応じて業務が決まっていれば「団体としての組織」を備えていると言えます。

以上の条件を満たしている場合には、最高裁判所判例が示す「権利能力なき社団」としての要件を満たすと言えます。

PTAの財産は誰に帰属するか

前記の最高裁判所判例によれば、人格なき社団のの資産は、その構成員に総有的に帰属します。

前述の通り、PTAも一般的には「権利能力なき社団」に該当します。したがって、PTAの財産はPTAの構成員であるPTA会員に総有的に帰属します。

では、この「総有的に帰属する」とはどのような状態でしょうか。

この点について、「権利能力」とは、法律上の権利・義務の主体となることができる資格を言います。

したがって、権利能力が無い社団は権利の帰属主体となることができないので、 社団の財産は構成員全員に潜在的に持分のない状態で帰属するとされおり、これを最高裁判所判例では「総有」と呼んでいます。持分権が無いというのは、脱退に際しての財産分割請求ができないことを意味します。

なお、最近の最高裁判所判例では「実体的には権利能力のない社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産については,実質的には当該社団が有しているとみるのが事の実態に即している」と判示しています(最高裁判所平成26年2月27日判決)。

PTAの対外的行為と構成員の責任

個人では負担を負わないのが原則

前記の最高裁判所判例によれば、権利能力なき社団の債務は社団の構成員全員に一個の義務として総有的に帰属し、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し個人的債務ないし責任を負いません(有限責任)。

すなわち、PTA会長やPTA役員がPTA外部との取引で個人的に債務を負うことはありません。PTA財産の範囲内でPTAが団体として責任を負います。

PTAは訴訟(裁判)の当事者はOK

前述の通りPTAは「権利能力なき社団」であり権利・義務の主体にはなれませんが、民事訴訟(裁判)においては当事者となることが可能です。

すなわち、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができます(民事訴訟法第29条)。つまり、PTAは民事訴訟において「原告」や「被告」になることができるのです。

実際に、近年では日本各地でPTA会費やPTA脱退に関する民事訴訟が多く提起されており、それらはPTAを被告として訴えています。なお、PTAに対して訴訟が提起された場合(「被告」になった場合)には、PTA会長が団体の代表者として訴訟対応することになります。

民事訴訟法

第29条(法人でない社団等の当事者能力)
法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

PTAは契約を締結することができるか?

前述の通り、PTAは人格がないため「権利能力」を持ちません。「権利能力」とは契約など権利・義務の帰属主体(プレーヤー)となりうる「資格」であり、これがないということは契約の当事者にはなれません。

したがって、権利能力がないPTAはそれ自体として契約の当事者にはなれないのが原則です。そのため、PTAが外部と契約を締結する必要がある場合には、自然人であるPTA会長が「PTA会長」という肩書き付きで契約当事者になります。

例えば、銀行口座は「PTA会長」の肩書き付きで会長個人名(例:○○学校PTA会長 山田太郎)を登録して作成するのが通常です。通帳の表書きには団体名が記載されていますが、表紙裏には代表者名が記載されています。よって、PTA会長が代わるたびに通帳の名義を変更する必要があります。

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